お子さんの読解力について、「どうすればもっと上がるのだろう?」とお悩みの方もいらっしゃるかもしれません。前回のブログでは、読解力を高めるための第一歩として**「語彙を増やす」**ことの重要性をお伝えしました。やはり、語彙力は読解力の土台であり、文章を読む上で分からない言葉を一つずつ調べ、類義語や対義語と共に理解していくことで、着実に語彙力は向上していきます。
しかし、読解力をつけるためには、ただ言葉を覚えるだけでなく、**「たくさんの文章を読む(多読)」**という経験も不可欠です。この多読を通して「読書体力をつける」ことが大切だと考えています。但し単に「たくさん読みなさい」というだけでは、読むことを苦手に感じているお子さんにとってはますます読むことが嫌いになってしまいます。今回はこの「多読」に焦点を当て、お子さんが楽しみながら多くの文章を読むための具体的な工夫について3つのポイントに分けてお伝えしたいと思います。
多読を成功させる3つのアプローチ
読解力を高めるための多読には、大きく分けて3つの視点があります。
1. 読書に「没頭」する体験:読む楽しさを知る
まず、最も大切なのは、子どもが**「面白い!」と感じる文章に没頭する体験**です。物語文でも、漫画でも、図鑑でも構いません。自分の興味関心に合ったものを読むことで、子どもは意識せずとも大量の文章に触れることになります。
この「没頭読書」は、以下のような効果をもたらします。
- 読書スピードの向上:夢中になって読むことで、自然と読む速度が上がります。
- 内容理解度の向上:楽しみながら読むため、内容が頭に入りやすく、理解度も深まります。
- 読書への抵抗感の軽減:何よりも「読むことは楽しい」というポジティブな感情が育まれ、読むことへの苦手意識を克服するきっかけになります。
この段階では、語彙力や読解レベルを気にせず、「好きなものを好きなだけ読む」ことを優先しましょう。
2. 「読書体力」をつける:長い文章と向き合う力
二つ目の多読の視点は、**「読書体力」**をつけることです。読書体力とは、長い文章を読んでも集中力を維持し、内容を理解し続ける力のことです。
例えば、分厚い単行本の物語を最初から最後まで読み切った経験は、子どもにとって大きな自信になります。逆に、長い文章を読むことに慣れていないと、算数の文章問題のような短い文章でも「読むのが苦痛だ」と感じてしまうことがあります。
没頭体験で培った「読む楽しさ」を土台に、今度は少しずつ、現在の読解レベルに合った、長めの文章に挑戦させてみましょう。 「自分にはこんな長い本は読めない」という思い込みを払拭し、「自分にも長い文章が読める!」という成功体験を積むことで、読書体力は着実に向上していきます。
3. 「やや難解な文章」に挑戦する:読解レベルを引き上げる
三つ目は、自分の現在の読解力レベルよりも**「やや難しい文章」**に挑戦する、という視点です。これは、没頭体験や読書体力づくりとは異なり、意図的に読解力を引き上げるためのトレーニングです。
ただし、注意が必要です。あまりにも難しすぎる文章を選んでしまうと、読むこと自体が嫌になってしまい、逆効果になる可能性があります。例えば、大人でも専門性の高い論文をいきなり読んでも、理解が難しいのと同じです。
自分の読解レベルよりも**「少しだけ難しい」**と感じる程度の文章を選ぶことが大切です。これを継続することで、読解力の壁を一つずつ乗り越え、着実にレベルアップを図ることができます。
「やや難解な文章」を攻略するサポートツール
やや難解な文章に一人で挑戦するのは、子どもにとって大きな負担になりかねません。しかし、現代にはその負担を軽減し、効果的な学習をサポートしてくれるツールがあります。
1. 電子書籍の「読み上げ機能」を活用する
電子書籍には、文章を音声で読み上げてくれる機能が備わっているものがあります。この機能を活用し、耳で音声を聞きながら、目で文章を追うことを試してみてください。
- 集中力の維持:難解な文章でも集中力が途切れにくくなります。
- 読めている実感:耳と目で同時に追うことで、「読めている」という実感が得られ、苦手意識を和らげます。
- 正しい読み方の習得:漢字の読み方や、句読点の区切り方なども自然と身につきます。
2. AIを活用し「事前に要約」を把握する
難解な論説文を読む前に、あらかじめその文章の要旨を把握しておくことも非常に有効な方法です。 これは、本来であれば自分で要約するトレーニングが理想ですが、読解力向上を目的とする場合は、まず文章の全体像を掴んでおくことが大切です。
- AIに要約を依頼:AIにまとまった論説文を読み込ませ、「100字程度で要約してください」とプロンプトで指示してみましょう。
- 理解度の向上:事前に要約を把握することで、頭の中で文章全体の構造や内容が整理され、よりスムーズに理解できるようになります。
- 要約力の学習:先に要約に触れることで、「要約とはこういう風にまとめるのか」という要約のコツを逆算的に学ぶこともできます。
この方法を使うことで、読むことに対する抵抗感を減らし、「自分でも理解できた!」という成功体験を積むことができます。これは、読解力に自信がない子どもにとって、非常に重要なステップです。難しい文章を「簡単だ」「分かりやすい」と感じられるようになることで、次のレベルへと挑戦する意欲が湧いてくるはずです。
日常生活での「読解力向上習慣」
これらの多読の視点を取り入れつつ、日常生活の中で読解力を高める習慣を身につけることも大切です。
社説の音読と意見交換
毎日、新聞の社説を音読することをおすすめします。社説は、分量も適切で、抽象度の高い論理的な文章が使われているため、読解力と語彙力を同時に鍛えることができます。
- 音読の効果:先述の通り、音読は目の動きを鍛え、読書スピードと理解度を向上させます。
- 時事問題への対応:同時に、世の中で起きている時事問題への関心も高まります。
- 思考力・表現力の養成:音読後、「この社説についてどう思った?」と、内容について意見を話し合うことで、自分の考えをまとめる思考力と、それを言葉にする表現力が養われます。
子どもの興味関心に合わせた教材活用
「難解な文章を読む」といっても、必ずしも大人向けの固い論説文である必要はありません。子どもたちの興味関心に合わせた教材を選ぶことで、読む意欲をさらに高めることができます。
例えば、電車が好きなお子さんなら電車に関する考察、昆虫が好きなら昆虫の生態に関する論説文など、AIにプロンプトで「小学校6年生向けに、昆虫の生態についてやや難解な論説文を800字程度で書いてください」といった指示を出せば、AIがすぐにオリジナルの教材を作成してくれます。このように、AIを活用すれば、子どもたちの興味に合わせた、まさにオーダーメイドの「やや難解な文章」を自宅で手軽に用意できる時代なのです。
読んだことを「アウトプット」する場を設ける
読解力を高める上で、もう一つ大切なのが、読んだことについて「アウトプット」する場を設けることです。これは、読むことの価値を高め、次の読書への意欲へと繋がります。
- 家族との会話:文章を書くのが苦手な子どもでも、読んだことについておうちの人とおしゃべりするだけでも立派なアウトプットです。「この話の〇〇が面白かった」「ここはよく分からなかった」といった感想や疑問を共有するだけで、読むことへの意義を感じられるでしょう。
- 学校での交流:学校の授業では、読んだことについて自分の考えを友達と交流する場面を積極的に作っています。同じ文章を読んでも、友達とは違う感じ方や、同じ感情でも異なる理由があることを知る。この体験は、「読むことを通して人を知る」という喜びにつながり、それがさらなる読む意欲へと繋がっていきます。
次回予告:読解力を深めるために(基礎編)
今回は、読解力向上のために「多読」を3つの視点からお伝えしました。
- 楽しく没頭して読む
- 読書体力をつける
- やや難解な文章に挑戦する
次回は、読解力をさらに高めるための基礎的な方法についてお伝えしていきたいと思います。基礎編では接続詞や段落構造に着目して読むことを中心にお伝えします。また、ご家庭でできる学習方法についてもお伝えできればと思います。
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