いつもブログをお読みいただき、ありがとうございます。 今日は「自立した学習者」を育てるという、教育において私が最も大切にしていることの一つについてお話ししたいと思います。それはズバリ、「自分で学習の計画を立てる力」です。
多くの親御さんや教師は、「効率的」であることを重視しがちです。良かれと思って、お子さんに「こうやって勉強しなさい」「このスケジュールで進めなさい」と、完璧なお膳立てをしてしまう。学習塾でも、緻密なカリキュラムやスケジュールが用意され、子どもはそのレールに乗るだけで力をつけられるかのように見えます。
確かに、短期的にはこの方法は非常に効率的です。大人が練り上げた計画に乗っかる方が、無駄がなく、最短距離で目標に到達できるかもしれません。しかし、本当にそれで良いのでしょうか?
私は、長い目で見ると、その「効率」が子どもの自立を妨げ、将来困らせることになると感じています。大人になったとき、私たちは誰も、自分の人生や仕事の計画を誰かに立ててもらうことはできません。自分で目標を設定し、達成するための道のりを描き、優先順位をつけ、スケジュールを組み、そして行動する。この一連のプロセスこそが、まさに「学ぶ力」であり、「生きる力」そのものだからです。
これからの時代は、単なる知識の暗記競争ではありません。変化の激しい不確実な世の中において、自ら問いを見つけ、学び続ける力が何よりも重要になります。そして、その土台となるのが、この「自分で計画する力」なのです。
非効率に見えても「子どもの自立」には不可欠
大人が子どもに計画を委ねることは、聞こえは良いかもしれませんが、実際にやってみると「なんて非効率なんだ!」と感じることでしょう。子どもは、大人のようにスムーズに計画を立てられませんし、予定通りに進まないことも多々あります。
しかし、その「非効率さ」の中にこそ、子どもの成長の芽が隠されています。
「勉強が大変だから、お手伝いはしなくていいよ」 つい、そう言ってしまっていませんか?
もしそうであれば、少し立ち止まって考えてみてください。 お子さんを家族の一員として、お手伝いも当然のこととして任せたほうがよいのではないでしょうか。たとえ「勉強の時間がなくなるじゃないか」と言われたとしてもです。
「勉強も、お手伝いも、すべて含めて自分で計画を立ててごらん」 「もしできないなら、どこに無理があったのか、一緒に考えてみよう」
最初からレールを敷いてあげたり、負担を軽くしてあげたりすることは、短期的な優しさに見えるかもしれません。しかし、それは、子どもが「自分の行動に責任を持つ」経験や、「時間管理」や「段取り力」といった生きる力を身につける機会を奪ってしまうことになります。
失敗してもいいんです。むしろ、どんどん失敗すべきだと私は思います。 大切なのは、失敗したときに親がどう接するかです。
- NG例: 「ほら、言ったでしょ!だからダメだって言ったのに!」
- OK例: 「失敗しちゃったね。でも、いい学びになったよ。次はどうしたらうまくいくかな?」
親は、子どもが目標に向かって走り続けるための「伴走者」です。目標が達成できなかった時も、結果だけを責めるのではなく、そのプロセスで子どもが何を経験し、何を学んだのかに焦点を当てて声をかけてあげてください。そうすることで、子どもは失敗を恐れずに挑戦し、生きる力を着実につけていくことができるでしょう。
「自分で計画する力」が育む未来の力
大人になったとき、私たちは「何を学びたいのか」「いつまでにこの仕事を終わらせなければならないのか」という問いに対し、自分で答えを出し、行動しなければなりません。
例えば、仕事であれば、 「このプロジェクトを成功させるためには、AとBとCのタスクが必要だ」 「Aは〇日、Bは△日、Cは□日かかるだろう」 「優先順位をつけて、まずはAから取り組もう」 「最終的な締め切りに間に合うためには、いつまでに各タスクを終わらせる必要があるか」
このようなスケジュール感覚や段取り力は、一朝一夕で身につくものではありません。それは、幼い頃から自分で計画を立て、実行し、振り返るという経験を積み重ねる中で培われる「学ぶ力」の土台なのです。
これからの時代は、過去の知識を暗記しているだけでは通用しません。自ら学び続け、変化に対応し、問題を解決する力が求められます。そのために、自分で計画を立て、実行し、振り返るサイクルを回せるようになることは、非常に重要なスキルとなるでしょう。
家庭で実践!学習計画の立て方と親の関わり方
では、具体的にどのようにして子どもに学習計画を立てさせれば良いのでしょうか。
1. 大枠は提示し、詳細は子どもに委ねる
最初からすべてを子どもに任せるのは難しいかもしれません。特に小学生の間は、大人が「これとこれとこれをやると、力がつくよ」という「大まかなガイドライン」を提示してあげて良いでしょう。例えば、「この1週間で、算数のこの単元と、国語のこの文章を読んでほしい」といった具合です。
その上で、「でも、どの順番で、いつやるかは、あなたが自分で計画を立ててごらん」と、具体的な進め方はお子さんに委ねるのです。
2. 短期計画から始める
いきなり半年や1年といった長期の計画を立てさせるのは現実的ではありません。まずは、「1週間の計画」から始めましょう。
- 最初のステップ: 「この1週間でやるべきこと」を、親子で一緒にリストアップします。
- 次のステップ: 「それをいつ、どのようにやるか」を、子ども自身に考えさせます。
慣れてきたら、1ヶ月、3ヶ月、半年、1年というように、徐々に計画の期間を長くしていくと良いでしょう。
3. 細分化のススメ:スモールステップでモチベーション維持
計画を立てる際、漠然とした目標ではなく、できるだけ具体的に細分化することが重要です。
例えば、「算数の問題集をやる」ではなく、
- 「算数の問題集の5ページから8ページまでを解く」
- 「算数の問題集の5ページの第一問を解く」
というように、「これならすぐに取り掛かれる」と思えるくらい小さなステップにすることで、子どものモチベーションを維持しやすくなります。
そして、一つ一つのスモールステップを達成するごとに、小さな「ご褒美」を用意するのも効果的です。これは、お菓子やお金でなくても構いません。自分で決める次のようなものでよいと思います。
- 「1ページ終わったら、好きな動画を5分見よう」
- 「この問題を解けたら、大好きな音楽を1曲聞こう」
といったように、子どもが「次も頑張ろう」と思えるような、ささやかな工夫を取り入れましょう。
4. 振り返り(PDCAサイクル)を習慣にする
計画を立てて実行するだけでなく、必ず「振り返り」の時間を設けることが重要です。
- 「今週の計画、どうだった?うまくいったところはどこかな?」
- 「難しかったところはあった?それはなぜだと思う?」
- 「次回の計画では、どう改善したらいいかな?」
うまくいかなかった点があれば、「今回は時間が足りなかったから、次はもう少し余裕を持った計画にしよう」といった具体的な改善策を、親子で一緒に考えます。このPDCAサイクル(Plan:計画、Do:実行、Check:評価、Act:改善)を回すことで、子どもは自分の計画を客観的に見つめ直し、より良い計画を立てる力を着実に身につけていきます。
勉強だけじゃない!「お手伝い」で育む計画力と生きる力
「自分で計画を立てる力」を養う上で、実は「お手伝い」は非常に効果的なトレーニングとなります。特に「料理」は、最高の教材です。
料理は、まさに「マルチタスク」の宝庫です。
- 「お湯を沸かしている間に野菜を切ろう」
- 「野菜を茹でている間に、お皿を用意しよう」
- 「この料理は煮込みに時間がかかるから、先に別のものを準備しておこう」
このように、時間の配分を考え、複数のタスクを同時にこなす「段取り力」や「時間管理能力」を自然と身につけることができます。
お手伝いを勉強の計画の中に組み込むことで、子どもは学習と生活が切り離されたものではなく、すべてが「自分で計画し、実行すべきこと」だと認識するようになります。家族の一員としての役割を果たす中で、「生きる力」を総合的に育んでいけるのです。
「偶然性」を楽しむ余白:計画に遊び心を加える
人生は、すべてが計画通りに進むわけではありません。むしろ、予期せぬ出来事や偶然の出会いが、私たちに大きな喜びや学びをもたらしてくれることもあります。
ビジネスの場では、大きなビジョンがあり、それを達成するための具体的な目標、そしてその目標を達成するための緻密な計画が必要です。今日の「やるべきこと」は、その大きな計画の細分化された一部として位置づけられます。
しかし、人生には、計画通りではない「偶発性」を楽しむ側面も大切です。 例えば、旅行を計画する際、綿密なスケジュールを立てて「あそこもここも!」と回るのが好きな人もいれば、あえて何の計画も立てずに「行き当たりばったり」で旅を楽しむ人もいます。
- 偶然出会った地元の人と意気投合し、秘密の場所に案内してもらう。
- たまたま通りかかったお店に魅了され、予定を変更して立ち寄ってみる。
こうした「偶発性」から生まれる発見や感動は、計画を厳守するだけでは得られない、人生の醍醐味です。
子どもの学習計画においても、この「偶発性」のための「余白」をあらかじめ設けておくことが重要です。
- 「この日は、自由に好きなことを調べる時間として空けておこう」
- 「もし新しい興味を見つけたら、そこに時間を割けるようにしておこう」
自分で立てた計画だからといって、その通りに全てをこなさなければならないわけではありません。新しい発見があったとき、もっと深く学びたいと感じたときに、柔軟に計画を変更できる「余白」を持つことで、子どもは「学ぶことの楽しさ」をより深く感じ、自らの好奇心に従って学び続けることができるようになるでしょう。
まとめ:自立した学習者を育てる「計画」と「伴走」
自立した学習者を育てるということは、単に「勉強ができるようになる」ことだけではありません。それは、変化の激しい現代社会において、自分自身の人生を主体的にデザインし、幸せに生き抜くための力を育むことです。
そのために、自分で学習の計画を立て、実行し、振り返り、改善していくという経験は、非常に重要なトレーニングとなります。最初は非効率に見えても、そのプロセスを通して子どもが身につける「段取り力」「時間管理能力」「問題解決能力」「自己責任感」は、一生涯の財産となるでしょう。
そして、親は子どもの「伴走者」として、結果だけでなく、そのプロセスをしっかりと見取り、価値づけてあげてください。子どもが失敗しても「いい学びになったね。次はどうする?」と声をかけ、一緒に次のステップを考えてあげましょう。
最終的に、子どもたちが「人の心の痛みが分かる」優しい大人に育ち、どんな困難にも立ち向かえる「大丈夫」という自信を持てるよう、親は子どもを信じ、愛情を注ぎ続けることが何よりも大切です。
このブログが、皆さんの子育ての一つのヒントになれば幸いです。本日も最後までお読みいただき、ありがとうございました。
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