保護者のための授業参観ガイド

授業参観は、普段のお子さんの学校生活を垣間見ることができる貴重な機会ですよね。内部から見ていると、多くの先生は授業参観では普段とは少し違う授業をする先生が多いです。「授業参観はこのネタ」と決めて授業をする先生や、「〇〇発表会」としてずっと子どもの発表が続く授業というのも多いです。

保護者の立場からすると「うちの子は授業中に手をあげて発言しているか」といった、ご自身のお子さんを中心に授業をご覧になることが多いと思います。もちろん、お子さんの様子を観察することも大切ですが、教師という立場から見た、その学級の雰囲気や本質を見抜くための「見るべきポイント」を、教師の視点からお伝えしたいと思います。


1. 教室環境

1つ目は「教室環境」です。教室環境は、子どもたちの無意識に働きかけ、落ち着きや学習態度に影響を与える非常に重要な要素です。

教室の整理整頓と清掃

授業参観は、給食後や掃除の後に設定されていることが多いので、クラスの普段の清掃状況が表れてしまいます。廊下の隅にバケツが置きっぱなしになっていないか、教室の片隅にゴミが落ちていないか、机や椅子がきちんと整頓されているか。こうした細部から、日々の先生の指導が子どもたちにどれだけ浸透しているかが見えてきます。さらに言えば、子どもたちのロッカーの中も見ておくと良いでしょう。そういった細かいところにまで目が届いている先生は、日々の指導もきめ細やかであることが多いです。

とはいえ、ロッカーの片付けが完璧でなくても心配はいりません。先生によっては、子どもの自主性を尊重し、ある程度は自主性に任せるというスタンスの場合もあります。特に高学年ではその傾向が顕著です。大切なのは、「整理整頓ができていないからダメ」と安易に判断するのではなく、「この先生は、どのような方針で環境を整えているのだろうか」という視点を持つことです。教室全体を眺めたときに、伸びやかで温かい雰囲気が感じられるか、それともどこか抑圧されて元気がないような空気感があるか、そういった印象も大事な情報源になります。

掲示物から見える学級経営

次に、教室の掲示物を見てみましょう。掲示物には、先生の指導方針や学級の雰囲気がよく表れます。

  • 誰が作った掲示物か?
    • 先生が作った掲示物が多いクラスもあれば、子どもたちの作品や手作りの掲示物が中心のクラスもあります。どちらが良い悪いということではありませんが、ここから先生の「子どもの主体性を尊重する」のか「教師主導で丁寧に環境を整える」のかといった学級経営の考え方の一端が見えてきます。
  • 掲示物の状態はどうか?
    • 掲示物が画鋲から取れかかっていたり、紙が破れていたり、何ヶ月も前の「生活目標」がそのまま貼られていたりしないか確認してみてください。子どもは無意識に環境から影響を受けます。掲示物が乱れていると、子どもの学習態度もどこか落ち着きがなくなるように感じることがあります。細かい部分ですが、クラスの日々の様子が表れるポイントです。

先生の机の上

先生の机の上も見てみましょう。 「子どもには整理整頓しなさい」と指導している教師でも、実は自分自身の机の整理整頓が苦手な人も少なくありません。教室の先生の机が整理されているか、それともプリントが無造作に積まれて雑然としているか。ここは、その先生の仕事に対するスタンスや、子どもたちへの指導の真剣さが表れるポイントです。


2. 子どもたちの「聞き方」を見る

次に、お子さんだけでなく、クラス全体の子どもたちの様子を見てみましょう。特に注目すべきは、子どもたちが先生や友達の話を聞くときの態度です。

  • 先生の話を聞けているか?
    • 先生が話している時、子どもたちは鉛筆やiPadなどを触らず、しっかり顔を向けて話を聞けているでしょうか。もちろん、数人が集中していないことはありますが、ほとんどの子が聞けているクラスは、規律が整っていると言えます。
  • 友達の話を聞けているか?
    • 先生だけでなく、友達が発表している時も、体を向けて真剣に聞いているか。これは、相手への「思いやり」の表れです。相手の話を真摯に聞けるクラスは、学力も伸びていく傾向にあり、良い学級風土が育まれている証拠です。
  • グループワークでの様子は?
    • 最近の授業参観ではグループワークが取り入れられていることが多くあります。グループ内で友達が一生懸命話している時に、うなずきながら相手を見て話を聞いているか。こうしたグループワークになるとより子どもの素が出るので、ごまかしがききません。お子さんの普段の様子や学級風土を知る良い機会になると思います。

3. 「授業内容」から先生の指導観を読み解く

授業参観の授業では、教師は授業そのものの質や内容よりも、「子どもが活躍する姿」を見せることを大切にしがちというのが実情です。

  • 単なる「発表会」になっていないか?
    • 中には、授業参観のために、子どもが教科書を音読したり、事前に練習したことを発表したりするだけの授業をすることがあります。
  • 「子どもの主体性」が発揮されているか?
    • 一方で、ワークショップ型の授業など、子どもたちが自ら課題を見つけ、友達と話し合い、主体的に学習活動を進めていく授業は、その場では先生が主導していなくても、その裏に先生の指導力がより求められます。このような授業は、子どもたちの学習意欲や探究心を育むという、先生の強い指導観が表れています。

「授業のねらい」と子どもの「変容」

本当に良い授業とは、子どもがその授業を通して、授業の前後で何かが「変わる(変容)」する授業です。授業参観でもそういった授業をする先生は、普段から授業を大切にしているのではないかと思います。授業を見るポイントとしては次の通りです。

  • その授業には、子どもたちが理解している明確な「ねらい」があるか?
  • 子どもたちは、そのねらいを達成するために本気で取り組んでいるか?
  • 授業の終わりには、子どもが成長を実感できるような「振り返り」の場があるか?

授業参観という特別な場であっても、この「ねらい」や「子どもの変容」を大切にしている先生は、普段から子どもたちの成長を第一に考えているはずです。

個々への「手立て」と「学び合い」

授業中、先生は一人ひとりの子どもにどう接しているか、という点も重要です。教師一人でクラス全員をケアするのは不可能なので、子ども同士がどうやって学び合っているか、誰かがつまずいた時に友達がサポートしているか、といった「学習集団」としてのクラスの姿に目を向けることも、先生の指導の姿勢を読み解くヒントになります。

まとめ

授業参観では、ついつい我が子のことばかりに目が行きがちですが、今日お伝えしたような「環境」「子どもたちの様子」「授業内容」といった広い視点を持つことで、クラス全体の雰囲気をより深く理解できます。

それは、お子さんがどんな仲間と、どんな先生のもとで、どんな風に学んでいるのかを知るための、貴重なヒントになるはずです。今回、教師サイドの視点からお話ししたので、先生方からは「そんなこと話すなよ!」と言われてしまいそうですが、ぜひ参考にしてみてください。

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