中学受験について思うこと

いつもブログをお読みいただき、ありがとうございます。

今回は「中学受験」について、私自身の考えをお話ししたいと思います。

まず、お伝えしておきたいのは、このブログは中学受験の「良し悪し」を判断するものではないということです。

中学受験をするかしないかは、ご家庭の教育方針、お住まいの地域の状況、お子さんの個性や志向など、実に多様な要因が絡み合って決まる、唯一無二の「家族の選択」です。公立がいい、私立がいい、という一元的な答えはどこにもありません。正直なところ、人生における選択は、良くも悪くも「賭け」のような側面を多分に含んでいます。

私自身は、小・中・高と公立の学校で育ち、自分の子どもも公立の中学校に通っていました。だからこそ、中学受験をしないという選択をしたご家庭にも、深く共感できる部分があります。

ただ、中学受験という一大イベントは、単なる進路選択にとどまりません。それは、親として、子どもの「幸せ」をどう考えるかという、本質的な問いを私たちに突きつける、貴重な機会ではないでしょうか。

今回は、公立と私立のメリットを比較しつつ、その選択を通して親が本当に見つめるべきことについて、お話ししていきます。


第1章:公立?私立?それぞれの選択肢の特徴とメリット

まず、公立と私立、それぞれの学校が持つ特徴と、そこから得られるであろうメリットについて、少し考えてみましょう。

公立校が育む「多様性という土壌」

公立の中学校の大きな魅力は、何といっても「多様性」です。

地域に住むあらゆる家庭環境、価値観、学力のお子さんが集まります。その中で、子どもたちは自分とは違う考え方や生き方を持つ友達と出会い、関わり、「世の中にはこんなに多様な人がいるんだ」ということを肌で学びます。これは、他者への寛容性や、どんな環境にも適応するしなやかさを育む上で、かけがえのない経験です。

また、中学受験をしない選択をすれば、放課後は習い事や塾に追われることなく、自由に過ごせる時間が生まれるかもしれません。

子どもたちは、日が暮れるまで公園で野球をしたり、友人と秘密基地を作ったり、日がな一日だらだらと話をしたりする中で、「非認知能力」を育んでいきます。自分たちで遊びを企画する主体性、意見をぶつけ合う中で学ぶ人間関係、そして何より、心から「楽しい!」と感じる原体験は、その後の人生を支える大切な財産となるでしょう。もちろん、地域によっては放課後に遊べる相手がいないという実情もありますが、基本的には公立校の大きなメリットといえます。

私立校が育む「探究という翼」

一方、私立の中学校には、それぞれが掲げる独自の「教育理念」があります。

  • 難関大学への進学を掲げる進学校
  • 国際的な視野を育むことに特化した学校
  • アートやスポーツに力を入れる学校

こうした学校の特色が、お子さんの個性や才能に合致すれば、6年間というゆとりある一貫教育の中で、その可能性を大きく伸ばすことができます。

また、高校受験がないことは、大きなメリットです。中学3年間が受験勉強一色になることなく、探究活動や部活動にじっくりと取り組むことができます。大学受験においても、近年重視されている「総合型選抜」では、こうした活動が評価されるため、将来を見据えた戦略的な学びが可能になるでしょう。

このように、公立と私立、どちらの選択肢にもそれぞれ異なるメリットがあり、どちらが良いと簡単に結論づけることはできません。



第2章:受験という競争の先に見据えるべきもの

中学受験は、残念ながら「競争」という側面を多分に含んでいます。

偏差値や合否という明確な結果で、それまでの努力が評価されてしまいます。合格すれば喜びの、不合格なら悔しさや挫折の体験となるでしょう。このプロセスは、子どもに「勝つこと」や「努力すること」の大切さを教えますが、その一方で、親子関係をゆがめてしまうリスクも孕んでいます。

「一緒に戦う」という連帯感は、時に子どもへの過度な期待やプレッシャーに変わり、最悪の場合、ニュースを賑わせるような「教育虐待」に繋がってしまうことさえあります。

  • なぜ、あんなに頑張ったのに?
  • どうして、もっと集中してくれなかったの?

こうした親の言葉は、子どもを追い詰めてしまいます。

だからこそ、中学受験という競争の中に身を置く前に、親として「合格」という結果だけではなく、その先に「どんな力を身につけてほしいか」という本質的な問いを、深く見つめる必要があるのです。


第3章:人生の「オーナーシップ」を子どもに渡す

私が子育てにおいて、そして教育において最も大切にしたいと願っているのは、「どんな状況でも幸せに生きることができる子ども」を育むことです。

人生には、思い通りにいかないこと、挫折、予期せぬ困難が必ず訪れます。しかし、どんなに厳しい環境に置かれても、「自分は幸せだ」と感じられる感受性や、自分らしく生きていける力があれば、子どもはきっと人生を豊かに歩んでいけるはずです。

そのために必要なのが、「ウェルビーイング」という概念です。

ウェルビーイングとは、単なる身体的な健康だけでなく、精神的、社会的に良好な状態にあることを意味します。そして、その核心にあるのは「自己肯定感」、つまり「自分はここに存在していていいんだ」と思える感覚です。

この自己肯定感を育み、どんな環境でも幸せを見つけられる感受性を磨くための鍵は、子どもが「人生のオーナーシップ」を持つことです。

「自己選択」と「自己決定」の経験は、このオーナーシップを育む上で欠かせません。

日本は幸い、親が子どもの職業や結婚相手を一方的に決めるような国ではありません。自分で進路や生き方を選び、決定できる自由が保障されています。だからこそ、その自由を最大限に活かせるよう、小さな頃から「自分で選ぶ」「自分で決める」という経験を、積み重ねさせてあげてほしいのです。

中学受験という選択も、最終的にはこの「自己選択・自己決定」の力を育むための、一つのプロセスとして捉えられるのではないでしょうか。


おわりに

中学受験は、決してゴールではありません。

それは、親と子が一緒に、「この子はどんな場所で、どんな人と出会い、どんな力を育んでいくのが、最も幸せなのだろうか」と真剣に向き合うための、貴重な機会なのだと思います。

今回のブログは、あくまで私個人の考えをまとめたものです。しかし、もしあなたが今、中学受験という選択肢を前に悩んでいるのであれば、お子さんの幸せな未来を考える上で、一つの視点として参考にしていただければ幸いです。

そして、どんな選択をされたとしても、親が子どもを信じ、愛情を注ぐことが、何よりもお子さんの「幸せ」を育む一番の近道であることは、決して忘れないでほしいと願っています。

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